この地域の再開発準備組合が発行した「まちづくり通信No.28」(2024年7月発行)に、「ご意見および質疑応答について」と題して、7つのQ&A(質問と回答)が記載されています。
その中で最初の「質問」として取り上げられている「事業協力者による立替金は返済する必要があるのか?」について、考えてみます。
まず、「まちづくり通信No.28」では、「回答」として、以下のとおり記載されています。
『準備組合と事業協力者間で事業協力協定書を締結しており、「準備組合の段階で何らかの理由でとん挫した場合、余ったお金は返す必要があるが、それ以上は求めない」という条項があります。そのため、地権者個人が立替金の返済を求められることはありません。過去の事例においても事業協力者から立替金の返済を求められた事例はありません。』
この記載について、皆さんは、どう考えますか?我々は、以下の問題があると考えます。
第一に、この記載の右下に、「総合不動産鑑定コンサルタント 〇〇氏」と記載された写真が載っていますので、この「回答」は、契約の当事者(債権者)である東急不動産ではなく、コンサルタント会社(当事者でない会社)の所長が作成したものと理解されます。東急不動産が、担当者の氏名及び押印のある文書として、前記の回答書を準備組合に送付しているのであれば、債権者自身が「とん挫した場合の債権放棄」を保証したものとして、我々当事者(債務者)としては、ある程度、信用できますが、当事者ではない会社が「保証」しても、我々当事者(債務者)としては安心できるものではありません。
第二に、「準備組合と事業協力者間で事業協力協定書を締結しており・・・」とのことですが、そもそも、準備組合の発起人(地権者である複数の理事)は、「事業協力協定書」の締結に際し、事業協力者(東急不動産)に有利な条項がないかについて、弁護士などの法律専門家のチェックを受けたのでしょうか?仮に、チェックを受けていないのであれば、我々地権者に不利な条項が含まれている可能性があります。
なお、「事業協力協定書」のような重要な文書については、契約の当事者が各々、その控を保存するのが、ビジネスの常識です。ところが、事業協力協定書は、事務局の建物(東急不動産が所有)に保管されており、理事長さえも、事業協力協定書の控を所持していません(1年前に我々が現理事長宅を訪問した時の現理事長の話)。
第三に、「事業協力協定書」には、本当に、「準備組合の段階で何らかの理由でとん挫した場合、余ったお金は返す必要があるが、それ以上は求めない」と記載されているのでしょうか?
通常、「事業協力協定書」のような重要な文書では、「とん挫」、「余ったお金」、「返す」などの文言は、用いられることがないと考えます。
よって、実際の条項は、他の文言で記載されている可能性が高いです。
また、一つの条項だけ見ても、正しい解釈ができない場合があるというのは、例えば契約実務に携わる会社の法務担当者であれば、常識です。なぜなら、この条項以外の記載の中に、例外規定などが記載されている場合があるからです。「事業協力協定書」の全文を読むことで、その中の一つの条項についても、正しく理解することができます。
準備組合が、「事業協力協定書」の全文のコピーを、有料でもよいので、希望する地権者に提供することは、我々地権者の利益の保護のためには必須と考えます。
第四に、「そのため、地権者個人が立替金の返済を求められることはありません。」とのことですが、この表現では、「地権者個人」ではなく、「地権者全員が連帯して」返済を求められる可能性があるように見受けられます。
第五に、「過去の事例においても事業協力者から立替金の返済を求められた事例はありません。」とのことですが、この理屈は、「過去に地震が起きていないから、今後も地震は起きません」という論法と同様に、根拠に乏しい説明です。
例えば、東急不動産が、「過去に、再開発の事業協力者として、100件の案件に関わっており、そのうち、30件の案件については、再開発組合の設立に至らず、準備組合の段階で頓挫(とん挫)しているが、これら30件の案件について、東急不動産は、地権者に、使用済みの立替金の返済を求めておらず、貴準備組合に対しても、これと同様に扱うことを確約する。この確約と、以前に締結済みの事業協力協定書が相違する場合、この確約が優先して適用されることをここに保証する。」との文書を、代表者印を押印したうえで準備組合の理事長に渡し、理事長がその文書を自宅で保存しているというのであれば、我々地権者は安心できます。このような安心できる説明を準備組合に求めます。