最近、震度7の熊本地震と、震度5弱の茨城県での地震が相次いで発生しました。内閣府によると、今後30年間での首都直下地震の発生確率は70%とされています。この数値(70%)は、1703年の元禄関東地震(M8.2)と1923年の大正関東地震(M7.9;関東大震災)の間に発生した8個の比較的規模の大きな地震(いずれもM7程度)が根拠となっています。なお、M7(マグニチュード7)程度とは、M8程度に比べて小さいとは言え、1995年の阪神・淡路大震災(M7.3)と同程度の大きさです(以上、首都直下地震の説明は、「巨大地震列島」(著者:長尾年恭、発行所:株式会社ビジネス社、2022年9月17日発行)の第128~131頁を参考にしました。)。
このような大地震の可能性を考慮した場合、当地区の再開発計画における「高層棟」は、本当に、「防災」に寄与しうるものなのでしょうか。今回はこれについて考えてみたいと思います。
最初に、防災面を除く一般的に知られている「高層棟」の問題点についても触れておきます。まず、高層棟の主に中層部分の階では、鳥害(主に鳩)に悩まされることがあります。また、主に高層部分の階では、下層部分の階に比べて強い風に悩まされることがあります。さらに、高層棟では、朝夕の通勤・通学時間帯にエレベーターが混雑しがちであったり、宅配便の受け取りに時間がかかったりするという問題があります。高層棟は、その大部分が住居用の部屋ですので、上の階からの水漏れのリスクもあります。高層棟の周辺の地上部分では、いわゆる「ビル風」(強い風)も発生します。
さて、防災面について高層棟で懸念されるのは、大地震の発生時にエレベーターが長時間、止まることです。停電になれば、水道のポンプも止まります。水が使えなくなれば、トイレも使えません。高層棟の中層~高層階の住民が、電気の復旧まで、何十階もの階段を上り下りするのは、体力的にきついことです。高層棟に自家発電設備があるとしても、3日程度で電気が止まってしまいます。
それでは、その間、避難所に避難すればよいのではないかと思われるかもしれませんが、そもそも、避難所の収容人数は、建物が倒壊・半壊した人数をもとに算出したものであり、免震構造で倒壊しないと考えられる高層棟の住民の数を含むものではありません。高層棟からの避難民は、長期間、生活困難に陥る可能性があります(以上、防災面での高層棟の問題点は、「AERA」(朝日新聞WEEKLY、発行所:朝日新聞出版、2026年8月24日発行)の第10~15頁の記事「地震列島で命を守る」を参考にしました。)。
このように考えてきますと、「防災」のために「大規模な再開発」を行なって、「高層棟」を造ると言いますが、そもそも、「高層棟」を造ることが、本当に「防災」のために有効なのかという疑問を抱きます。
今後の大地震の発生の可能性を考えますと、共同住宅を新築するにあたり、高層(20階以上)のタワマンではなく、低層~中層(例えば、10階以下)にしたほうが、いざというときに安心できるのではないでしょうか。
再開発を行なうとしても、今の「高層棟ありき」の計画ではなく、「低層棟~中層棟」の計画が望ましいと考えます。「低層棟~中層棟では、再開発事業の採算が合わない」というのであれば、「大規模な再開発」ではなく、「小規模~中規模の再開発」を、住民主体で、住民が選んだコンサルタントとの協働で計画していくのがよいと考えます。
<瓦版その26についてのお知らせ>
瓦版その26に記載した税金の金額の算出方法の詳細については、当会のホームページの瓦版その26の画像の下方の説明文をご覧ください(アーカイブでは2026年8月)。
